疑問3・遺伝子組み換え作物は人に安全なのか?

2017年07月20日 07:32

さまざまな形のトウモロコシ(提供、フリーストックフォト

遺伝子組み換え作物で、食べた人や動物への健康被害は起きていません。また周辺環境の悪影響も観察されていません。被害が科学的にこの種の作物が販売されて20年経過しましたが有害な悪影響が証明された例はありません。

消化のしくみ

遺伝子組み換え作物は、必要な性質に関連する遺伝子を入れることで、植物の中にその性質をもたらす新しいタンパク質を作り、付加価値を与えるものです。

人間などほ乳類は、食物を食べると、かみ砕いた後に胃で分解し、そこから腸で栄養を吸収します。タンパク質はアミノ酸に分解され、他の栄養成分と一緒に腸で吸収されます。肉、魚、野菜などの生物を食べるということは、日々、遺伝子を食べていることになります。

遺伝子組み換え技術で導入された遺伝子が作るタンパク質は、普段食べている食物の中のタンパク質と同じように、分解、栄養として吸収されます。化学物質のように長期にわたり体内に蓄積して、長期的に悪影響をもたらすといったことはありません。

害虫が食べて死ぬ遺伝子組み換え作物があります。害虫抵抗性作物と呼んでいます。これを人が食べて大丈夫かという当然の疑問があります。その説明をしてみましょう。

Bt(バチルスチューリンゲンシス)と呼ばれる土壌微生物は、殺虫タンパクを作ることができますこのBtから殺虫タンパクを作る遺伝子をもらってきて入れているのが害虫抵抗性作物です。Bt由来の殺虫タンパク質は、化学物質ではなく、生物が作る自然界に存在する殺虫成分として、農薬などをなるだけ使わない有機農業でも、化学成分を使った農薬の代替品として使われています。

このタンパク質は、アルカリ性の虫の消化管の中で活性化され消化管の粘膜の受容体とくっつくと、虫の消化管の細胞が壊れ、害虫が死んでしまうのです。ほ乳類の場合には、この受容体をそもそも持っていないのと、消化器官の中が酸性なので消化され、Btタンパク質を食べても問題はありません。(図、害虫抵抗性作物の仕組み。厚生労働省「遺伝子組換え食品の安全性について」)

タンパク質は食べ物によるアレルギー反応を引き起こす原因の一つになります。遺伝子組み換え作物については、導入した遺伝子が作るタンパク質がアレルギーの原因にならないことを確認することが、安全性審査の中で義務付けられています。

日本は、多くの遺伝子組み換え作物を輸入して食していますがその多くは、食用の油やその油を使った加工食品、動物の飼料、飲料の甘味料などとして使われています。

【参考パンフレット】

厚生労働省「遺伝子組み換え食品の安全性について
消費者庁「食品表示に関する共通Q&A(第3集:遺伝子組換え食品に関する表示について)

遺伝子組み換えについては、全米科学アカデミーが報告書をまとめています。(参考記事「遺伝子組み換え作物、健康被害なし」)そこでも、過去の遺伝子組み換え作物は人間や動物が食べても安全であり、環境を害することはないという結論をまとめた報告書を16年に出しています。

医学情報は研究機関や、政府などの公的な機関が確認したものが信頼できます。遺伝子組み換えをめぐり、健康被害が出ているという情報が頻繁に流れます。しかし、その大半は発信をたどると、あいまいなものが大半です。情報を確認しましょう。

もちろん、消費者が食べ物について、安全を求めるのは当然です。こうした不安を払拭するために、遺伝子組み換え作物の生産者は情報の提供に努め、受け取る私たちも正確な情報を見極める努力が必要でしょう。

品種改良と遺伝子組み換え技術

人は農作物の品種改良を重ねてきました。今私たちが食べている農作物は、すべて人間が受粉による交配育種等のよって品種改良をしてきたもので、野生にそのまま生えているような自然のものはありません。人間がまったく手を加えていない〝自然〟のものがあるとすれば山菜ぐらいでしょう。例えばトマトの原種と市場に流通するものの違いを見ると、大きな変化が分かります。

品種改良は、持たせたい性質を、受粉・交配によって次の世代の植物に伝えることで、食べ物として、人間が食べておいしく、安全で、栽培しやすく、たくさん獲れる、などの性質を持たせています。遺伝子が変わることによって新しい性質が生まれます。

遺伝子組み換えは、基本的にこの取り組みと同じです。違いは、従来の交配育種では、多くの遺伝子が移動するため、目的としない遺伝子の移動まで起こり、目的としない性質が生まれたりするため、目的とする性質だけが残るまで何度も交配を繰り返す必要があります。これに対して、遺伝子組み換え技術の場合は、持たせたい性質に関係する遺伝子だけを入れることができるので、無駄がなく確実であること、また交配可能な植物同士以外のものから遺伝子をもってこられるので、品種改良の幅が広がったということです。

例えば現在、商品化されている遺伝子組み換え作物は土壌微生物から遺伝子をもらってくることで新しい性質を付け加えています。

品種改良は受け入れられてきましたが、遺伝子組み換え作物には、不安の声があります。それは、こうした事実があまり知られておらず、遺伝子組み換え作物だけが、人間が遺伝子を操作しているというイメージがあるからではないでしょうか。

そして今、健康に役立つ遺伝子組み換え作物の研究も進んでいます。農林水産省の所管の研究機関である生物科学研究所では、スギ花粉症に効くお米の開発をしています。体の中に花粉に対する抵抗反応をくしゃみ、かゆみなど過剰な反応にしないように、特殊なアミノ酸を遺伝子組み換え米で体の中に取り込もうとするものです。(生物研の解説ページ

発展途上国ではビタミンA欠乏症が広がっています。ビタミンAは人間の体の組織づくり、子どもや胎児の成長などに役立ち、肉類、乳製品などに含まれます。食生活における多様性がないと、それをわずかしか得られないのです。

この問題で、遺伝子組み換え米をつくることによって、ビタミンAを得られるような研究が進んでいます

フィリピンにあるIRRI(国際稲研究所)で開発が進み、商業栽培の開始の承認を目指した議論が行われています。(IRRIの解説ページ、英語)

そして遺伝子組み換え技術を支えるため、日本の生物研などが協力しながらIRRIではコメなどの遺伝子解析が行われています。これは作物の病気の抑制や、コメの新品種の開発などに貢献しています。

遺伝子組み換え作物は、現実に世界の人々の食糧を増やし、健康を増進させることに役立っているのです。

遺伝子組み換え作物、7つの疑問・はじめに
疑問1・遺伝子組み換え作物は収穫量を増やすのか?

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