疑問5・遺伝子組み換え作物は、経済的利益をもたらすか? 

2017年07月31日 08:53

インドの遺伝子組み換えワタと農民の自殺は関係ない。

(英紙ガーディアン記事・リンク

遺伝子組み換え作物、7つの疑問・はじめに」より続く

遺伝子組み換え作物は、開発途上国から先進国まで、農家の収入を増やしています。PGエコノミクスという調査会社の試算によれば、遺伝子組み換え作物によって、2015年までの20年で、世界の農家の収入は1677億ドル(18兆6100億円)増加したという推計があります。増産は穀物価格の変動を抑制する効果があり、消費者のためにもなっています。

農業経営で種子はコストの一部

「利益になるから、遺伝子組み換え作物を使うのさ」と、アメリカの農家を訪ねると話していました。遺伝子組み換え作物を使うことによって、収穫が増え、労力が減り、収入が減るためです。

農作物でのたいていの種子は品種改良をされたものです。その特性や品質を担保するため、ほとんどの農家は種子メーカーや、特許を持つ機関(日本のコメで権利を持つ地域農協など)から、種や苗を買います。種を毎年買うのは農家にとっては当たりまえのことになっています。

遺伝子組み換え作物の種子は、通常の種子より数割—2倍程度高いとされます。しかし、それを購入しても、農家は利益を確保できるのです。

一例ですが、日本のコメの生産コストでは2009年度(平成23年)で、育苗の値段は全体の4.1%程度にすぎません。(図表)

遺伝子組み換え作物を批判するとき、その値段の高さを批判されることがあります。確かに、遺伝子組み換え作物の価格は、従来の品種改良で作られた種子より、50%以上高くなっているとされます。しかし日本のコメ農家は一例ですが、農家の生産にかかるコストで、種子価格はその一部にすぎません。

それよりも、遺伝子組み換え作物を使うことで、これまでみてきたように、除草、除虫に必要な人件費が抑制され、収穫が増えます。最終的に農業生産者にとって利益になるからこそ、遺伝子組み換え作物が使われるのです。

小規模農業に使える新技術

2014年国連は、「国際家族農業年」というキャンペーンを行いました。現在は世界に約5億戸の家族経営の農家があります。その支援が、重要な問題になっています。遺伝子組み換え作物はこれまで大規模な農業に使われてきました。しかし、それは小規模農業でも、十分に活用は可能とされます。

モンサントを取材したとき、同社は「持続可能なグローバル開発」というセクションを儲けていました。主任ディレクターのディーン・マクベイさんは次のように語っていました。「米国のような大規模な農業だけではなく途上国の小規模な農業でも、最新技術を使うと、同じように増産、コスト削減の効果がでます。米国で試した技術をアレンジして世界各国に提供していきます。日本は農業の規模が小さいと聞いていますが、当社の技術を使えば、収穫の増加に必ず役立つでしょう。途上国でも同じです」と述べていました。

同社は、マイクロソフトの創業者で慈善活動家のビル・ゲイツ氏の運営するゲイツ&メリンダ財団と協力して、アフリカでの農業指導、技術や種苗提供を行っている。「この協力は社会貢献活動の一環で、利益は出ません。また途上国の農業ビジネスはかなり難しく、まずは人々を助けるという意味の方が強くなります。ただし将来的にはWin-Win(共栄)の関係を作りたいです」と、マクベイさんは話していました。

遺伝子組み換え作物は現在28ヵ国で使われるようになっています。米国、ブラジルなどの大規模生産が行われています。米国のダイズやトウモロコシ、インドのワタ、ブラジルのトウモロコシなど各地の重要な農産品で遺伝子組み換え作物が使われています。

「インドの遺伝子組み換えワタで自殺増」はフェイクニュース

インターネットを検索すると、「インドにおいて害虫抵抗性の遺伝子組み換えワタで多くの農業生産者が自殺へと追いやられた」という主張を目にすることがあります。これは誤った情報です。

しかし、これは一部の環境活動家が主張しているのみで、統計上の根拠はありません。インドの農民の自殺があることは事実であり、それは痛ましいことです。しかし、それは遺伝子組み換え作物が直接的な原因ではないでしょう。厳しい労働、借金、干ばつなど、さまざまな要因があるとされます。その証拠に遺伝子組換え作物が普及する以前から、自殺の問題は起きていました。

むしろ遺伝子組み換え作物のワタが、それを使う農業生産者の収益を118%に、収量を64%増やし、殺虫剤散布にかかるコストが25%減少したという2004年の調査もあります。(調査会社IMRBインターナショナルの調査記事(英語))

また、遺伝子組換え作物と農業生産者の自殺の問題の因果関係を否定する情報はたくさん発表されています。

米国のシンクタンク国際食糧政策研究所のリポート「Btワタとインドの農民の自殺」(2008年)(英語)

英紙ガーディアンの記事「インド農民の自殺と遺伝子組み換えは関係ない」(2008年)(英語)

また、インドでは増産によって農家の生活が改善したことに加え、増産によって世界の綿花価格が抑制され、ジーンズの値段も下がったという意見もあります。

遺伝子組み換えでジーンズに価格破壊の波」(ウォールストリートジャーナル、2017年)

遺伝子組み換え作物は生産者にも、消費者にも経済的利益をもたらしているのです。

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