日本産の遺伝子組み換えトウモロコシを食べてみた

2017年07月07日 00:35

(写真1)勢いよく成長する遺伝子組み換えダイズ(茨城県河内町のモンサント実験農場で)

遺伝子組み換え(GM : Genetically Modified)作物の農場見学会があった。日本モンサントが茨城県河内町に持つ実験農場を同社の協力で16年8月に視察した。ここは日本で数少ない遺伝子組み換え作物を栽培する場所だ。16年8月に行われたもので、日本では栽培例は数少ない。あまりない体験を読者に共有したい。

遺伝子組み換え作物は除草の手間を減らせる

日本モンサントの研究農場では除草剤耐性ダイズ、害虫抵抗性トウモロコシの生育状況を見ることができた

農業において雑草取りは大変な作業だ。農薬は作物、また作業者と作物を食べる消費者に悪影響を与えてしまう可能性がある。農薬の使用を減らす必要がある。遺伝子組み換え作物では、特定の化学成分の農薬をかけても枯れない性質を持たせることができる。これを使えば、農薬の散布は減り、作業は楽になる。

(写真2)3つの状況をつくり遺伝子組み換え作物の効果を確かめた農地

(写真3 )遺伝子組換えではない普通の大豆にグリホサート除草剤がまかれ枯れている。遺伝子組み換え作物は枯れていない

(写真4)グリホサート除草剤に耐性のある遺伝子組み換え大豆

(写真5)除草剤グリホサートを撒かない遺伝子組み換え大豆は雑草だらけ

「写真2」は3つの状況を農場でつくり遺伝子組み換え作物の効果を見えるようにしている。左側の部分(拡大すると写真3の中央)は遺伝子組換えではない通常の日本のダイズ品種(しゅ)「エンレイ」を植えた農地に、除草剤グリホサート(モンサントのブランド名はラウンドアップ)を1カ月前に撒いた状態だ。普通の大豆は除草剤をまくとこのように枯れる。

真ん中の部分(拡大すると「写真4」)は遺伝子組換え技術によって除草剤耐性の性質を付与した大豆で、除草剤グリホサートを1回散布するだけで、雑草だけがきれいに枯れて、大豆は枯れずに生き生きと生育している。一番奥の部分、拡大すると「写真5」は、遺伝子組換えの除草剤耐性大豆だが、除草剤グリホサートを散布しないと、このように雑草が生えてしまいダイズが隠れてしまっている。除草をしないと、ダイズの生育にも悪影響が生じる。

これらを見比べれば、遺伝子組み換え作物は農作業の手間を大幅に減らすことが分かる。また、この技術によって雑草防除のために土を耕さなくて済むようになり、土壌中からのCO2の発生を抑える「不耕起栽培」の普及にも貢献しているという。

害虫から作物を守る遺伝子組み換え技術

害虫耐性を持つ遺伝子組み換えトウモロコシの効果についても、農場で見ることができた。

(写真8)害虫抵抗性を持つ遺伝子組み換えのトウモロコシ。青々としている

(写真9)普通品種のトウモロコシ。害虫にやられてしまった

「写真8」が遺伝子組換えをして害虫抵抗性を持つトウモロコシ、「写真9」が遺伝子組み換えではないトウモロコシだ。いずれも農薬は使っていない。前者の方が大きく成長しており、葉も実もきれいなままだ。後者はは葉から実まで虫食いの穴が開いて枯れてしまっている。これはトウモロコシ自体が遺伝子組み換えで殺虫タンパク質をつくることができるためだ。トウモロコシを作る場合には、通常は多くの殺虫剤を散布しなければならないが、そうしなくても害虫防除が可能になる。ただしこの殺虫成分は土壌微生物が作るもので特定の標的害虫にしか効果は発揮しない。人やほ乳類は、消化の仕組みが違うので特に影響はない。

(写真10)収穫された遺伝子組み換えのトウモロコシ。虫食いがなく、見栄えが良い

訪問の8月12日は茨城県の気温は摂氏36度で日差しが強く、屋外では見学だけでも大変だった。夏の炎天下の農作業の過酷さが推察できた。遺伝子組み換え作物を使えば、除草や農薬散布の手間が大きく減る。世界各国の農家がGM作物を積極的に利用する理由は当然と思われた。

栽培中の遺伝子組み換え作物を見ると、雑草防除効果、害虫を寄せ付けないことによる農薬使用の削減など、生育へのプラス効果は明らかだった。収穫されたトウモロコシも見栄えがよく、味もよかった。

日本では遺伝子組み換え作物が大量に輸入され使われているのに危険という印象が広がっている。実際に見て食べることで、参加者らは「なぜイメージが悪いのか」と、そろって不思議がった。

モンサントはこれら5分野の技術を融合させ、世界の農業で「2030年までにコーン、ダイズ、ワタなどの主要作物の単位面積当たり収量を、2000年までの倍に伸ばしつつ、作物栽培に必要な資源(水、土地、肥料など)を3分の1削減する」という公約、また「2012年までに、カーボン・ニュートラル(温室効果ガスを増加させない)な作物の生産システムを実現する」を掲げているという。実現すれば、世界の食糧事情、エネルギーの消費は大きく改善するだろう。

食べることで、新しい発見

その後場所を変えて、GMスイートコーン、また従来の交配育種で誕生し同社が茨城県を中心に販売しているコメ、「とねのめぐみ」を使った食事をした。(写真7)とねのめぐみ

遺伝子組み換えトウモロコシは害虫抵抗性の形質を加えているが、外見や味に変化は無い。ただし虫食いがないので見栄えはよく、生育が良いため、味もおいしかった。そして取れたてのコーンゆえに、甘く、芳醇な香りがした。

とねのめぐみは人気米「コシヒカリ」と、病気に強く粒の大きい「どんとこい」を交配してつくられたコメだ。ただし遺伝子組み換えではない。コメには適正な産地があるという。とねのめぐみは茨城県向けだ。実験農場のある河内町は利根川流域にあり、それの運んだ肥沃な土壌にある農業地帯だ。日本モンサントは、実験農場のある同町の農業への地域貢献や、そして日本における米作の重要さを考え、新しい品種として開発したという。

とねのめぐみは食べるとコシヒカリのようで、大粒で甘みがあり、粘り気が強く大変おいしかった。茨城県内では少しずつ生産と販売が広がっているという。

実際に食べても、当然ながら遺伝子組み換えのトウモロコシは特に安全面で問題はなく、参加者はそろってこの作物を「日本でも広げるべきだ」と肯定的に受け止めていた。食べて「おいしい」と感じる行為は、頭で理屈をこねくり回すだけの営みよりも、新しい発見と気づき、そして深い印象を、参加者にもたらしたようだ。

今こそ新技術「遺伝子組み換え」の議論を

日本の農業は、TPPへの警戒感など後ろ向きの話ばかりだ。しかし、とねのめぐみと、遺伝子組み換えトウモロコシを実際に食べ、そのおいしさをかみしめながら、新しい技術を使いこなせば、日本の農業は成長できるのではないかという期待を抱けた。

遺伝子組み換え作物を使うと、害虫を減らし、収穫量の拡大、農作業の手間の減少による労力、コストの削減というメリットは、体験し、味わったことで明らかだ。

しかし、遺伝子組み換え作物への反感によって、その活用が進まない。これは生産者、消費者の自由な選択を妨げている。これは不幸なことだ。

「私たちの遺伝子組み換え作物の技術は日本の農業にも貢献できるという思いはありますし、見学してくださった農業生産者の方々からは使ってみたいという声が実際にあります。しかし社会全体の受け入れが必要です。まずこの作物の本当の姿を知っていただきたい」と、日本モンサントの山根前社長(2017年3月末で退任)は話した。

日本の農業は困難な状況にある。このまま何もしなければ高齢化と後継者不足、そして国際競争の中で立ちゆかなくなる。消費者は農業保護の名目で、国際基準に比べて高い農作物を購入し続けることになるだろう。遺伝子組み換え作物を含めて、生産者、消費者が新しい技術を積極的に受け入れることが、日本の農業を飛躍させる契機になるはずだ。

遺伝子組み換え作物について冷静な議論を始めるべき時だろう。

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