このサイトが目指すもの

2017年06月25日 22:37

(写真提供、ぱくたそ)

このサイトは、日本と世界の農業技術や制度を紹介するサイトです。さまざまな立場の方の支援を受けながら、「農業と食を考える市民フォーラム」が、情報を提供していきます。農業などを取材してきたジャーナリストの石井孝明が、農業の未来に関心を持つ皆さんの協力で情報を編集します。

農業技術にはさまざまありますが、このサイトではまず日本の農業を変えるかもしれない、また世の中で最も誤解されていると感じる「遺伝子組み換え作物」に着目し、公平で正確な情報を提供することにしました。

農業に必要なのは技術革新

「日本の農業は衰退している」「効率化が図られていない」。そんなイメージがあります。そして改革が叫ばれます。農業の現場を歩き、人々の話を聞くと、確かに残念な面があります。日本には、やる気のある農家、優れた技術、肥沃な国土があります。それなのにさまざまな慣習、制度によって、日本の農業の持つ力が充分発揮されていないのです。

また農業を世界規模で考えてみましょう。世界の人口は1900年に16億人でした。ところが、それは爆発的に拡大して、現在の地球には72億人超の人々が生きています。これが2050年には90億人を突破すると予想されています。これは喜ばしいことですが、人々が生きるためには食糧が必要であり、増産が必要です。さらに気候変動が地球規模で進行し、それに農業は対応していかなければなりません。

どうすればよいのか。私は技術革新による生産性の向上が、農業をめぐる問題を解決していくと思います。すべての産業がそうやって、成長し、社会問題を解決してきました。その技術の中で、遺伝子組み換え作物に期待しています。

日本の農業は、新しい技術によって生産性を高めなければなりません。それなのに、世界で普及している重要な技術である、遺伝子組み換え作物の技術が導入されていないのです。なぜ、このような誤解が生まれるのか。このサイトでは正確な情報を提供して、読者の皆さんと共に考えていきます。

スーパーで売られている農作物もすべて人間が遺伝子を操作している

遺伝子組み換え作物は、「生命の設計図」とも言える植物の遺伝子を生物工学によって変えて、植物に人間に役立つ性質を与えるものです。例えば、水不足、寒さ、暑さなど特定の気象条件に耐えられる、収穫量の拡大、特定害虫がつかない、おいしさなどの性質です。日本のある研究者は、この技術を使って「食べると花粉症の症状が改善される」というお米を研究しています。

この作物が米国で商品化されて約20年が経過しました。2016年には栽培国は26カ国にのぼり、遺伝子組換え作物栽培面積総計は1億8510万ヘクタールとなりました。農業の生産性の向上、収穫の拡大、農地や水の使用量の削減、農薬の削減などに貢献ました。

「遺伝子組換え」という言葉のイメージからか、遺伝子組換え作物だけが人工的に人間が遺伝子をいじって作られた作物で、それ以外の農作物は、人間が手を加えていない自然のものだと多くの人が信じています。それはまったくの誤解です。

今私たちが食べている農作物はほぼすべて、野生で人間が手を加えずに生えているようなものはありません。すべて人間が、花粉による交配なども含めて品種改良を行い、遺伝子を変えることによって、味がよく、栽培しやすく、毒が無く安全など、人間が食べる農作物に適したものに変えてできたものです。

(資料写真、遺伝子組み換え作物、農水省提供)

従来の品種改良では、多くの遺伝子が変わる上に、どこの遺伝子がどう変わって新しいものが出来たか、遺伝子レベルまでは確認しないまま商品化されます。偶然に頼るため狙った性質のものができるまで、何度も交配を重ねるなどして時間もかかります。これに対して、遺伝子組み換え作物は、味が良い、収量が多い、など、目的とする性質にどの遺伝子が関係しているか分かるようになったため、その遺伝子を1つ、あるいは2~3だけ入れる技術なので、少ない遺伝子の移動で、狙った性質を確実に実現することができるようになったのです。

ところが、この種の作物は日本では反対に直面しています。「健康に害があるのではないか」「環境に悪影響があるのではないか」という懸念です。残念ながら、この2つの懸念は杞憂にすぎません。健康被害などの問題は一つも確認されていません。

日本では、遺伝子組み換え作物の生産と流通は法律で、禁止されていません。実際に動物の飼料、食用油などを中心に海外から大量に輸入されています。しかし農業の現場や、食品製造の現場では、それをもっと使いたいという声があります。それなのに、社会の一部にあるこの種の作物をめぐる不安や怖れを一因に自粛が行われて、生産ができず、使用される場面も限定的なのです。

理解によってイノベーションを享受しよう

私はこのサイトを通じて、遺伝子組み換え作物の情報を、できる限り正確に伝えたいと思います。もちろん、この問題に、さまざまな意見はあるでしょう。そうしたものは尊重しますが、世界と日本にあふれるこの作物の情報には正しくないものも散見されます。そして恐怖という感情が、この問題で冷静な判断を妨げているように思えます。

私は核物理学を大きく進歩させた物理学者のマリー・キューリー(1867—1934)の言葉を思い出します。

「人生において怖れることは何もない。ただ理解すべきことがあるだけだ」

食べ物には不安があることは、理解できます。重要な問題について、情報と理解のないまま、社会的な意思決定が行われ、産業と技術の革新(イノベーション)の機会が失われるのは残念なことです。そして遺伝子組み換え作物は日本の農業の改革の重要な道具になるのです。「理解」が広がれば、「恐怖」は薄れ、賢明な日本の市民は合理的な判断を下すはずです。

農業の未来のために、一緒に遺伝子組み換え作物について、考えませんか。

2017年(平成29年)7月7日

農業と食を考える市民フォーラム
連絡先:石井孝明 

(ishii.takaaki1@gmail.com)

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